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包囲網脱出

「日本はどうなっちまったってんだ」


両親に事情を聞き出そうとしたが、雌ゾンビと化した父と母はやらせろ的な事を連呼するばかりで話にならなかった。

テレビを付けてもその手のニュースはは一切流れていない。

母から奪ったスマホでネットニュースを見てみると、男の目撃情報がトピックスに上がっており。

その中にはこの辺り近辺の情報――つまり俺の情報が――乗っていた。


ネットで色々調べた結果、今の日本に男は殆どいない事が分かる。

どうやら男だった人間も何らかの影響で、今は若い女――つまり雌ゾンビへと変わっていしまっている様だ。

そして雌ゾンビ共は雄との交尾を狂ったように求めていた。

一体何が原因でこうなってしまったのか……


「ん?」


気配を感じる。

家の周りを大人数が囲む気配だ。

窓から外を見てみると、家の周りを大きな盾を手にした機動隊の様な奴らが取り囲んでいた。

言うまでも無く全員女だ。


制服姿の女が前に出て来る。

その手にはメガホンが握られていた。


「ここにいるのは分かっている!危害は加えないので素直に投降しなさい!10数えるうちに出て来ない様なら、残念だが強硬手段として突入させて貰う!!」


まるで立てこもり犯への最後通告だ。

しかし何故俺がここにいると分かったんだろうか?

家に入る所は誰にも見られていないはずだが。


兎に角家から脱出しよう。

メガホンを持って叫んでいた女は冷静そうに見えるが、本当に冷静なら何もしていない人間を機動隊で囲んだりはしないだろう。

今の日本の住民はその全てが盛りの付いた雌だけだ。

掴まれば犯されてしまうのは目に見えている。


愛の無いH等御免被る。

愛しあう大好きな人に初めてを捧げる。

その為に異世界での誘惑も振り切り、これまで童貞を貫いてきたのだ。

欲望塗れの肉食系ゾンビにくれてやる為ではない。

俺はカウントが修理了するよりも早く2階の窓を開け、淵を力強く蹴りぬいて向かいの家の屋根へと跳躍する。


「逃がすな!撃て!!」


パンパンと音が鳴り響き、銃弾が俺の体を掠めた。

鎮圧用のゴム弾ではない。

実弾だ。

当たったら普通に死ぬような武器を迷わず使ってきた事に度肝を抜かれる。


「まじかよこいつ等」


流石の俺もこれが当たると多少は痛い。

俺は弾を躱しながら素早く跳躍し、次から次へと屋根を飛び移ってその場を離れた。


奴らを撒いた俺はマンションの屋上に身を隠し、どうするべきか考える。

行く当て等は当然ない。

こういった場合、海外映画とかだとゾンビになっていない生存組みたいなのと合流するのが御約束なのだが。

果たして今の日本にそんな人間が残っているのだろうか?

可能性が有るとしたら僻地の離島とかそんな場所だろうが……


「なんだ?」


考え事をしていると、空から何かが近づいて来る気配を複数感じて、その方向に目を凝らす。

鳥ではない。

鳥にしては余りにも大きく、そしてバタバタと風を切る音が五月蠅過ぎる。


「まじかよ……」


俺の視界にはヘリコプターが6機。

それが真っ直ぐ此方へと向かって来ているのが見えた。

俺は咄嗟に屋上からマンションに入り込む。


距離的に相手からはまだ自分はまだ見えていない筈。

取り敢えずマンション内に身を潜ませ、あれをやり過ごそう。

そう思って昇降口に身を潜ませていると、次々とマンション内のドアが開いて行くのが気配で分かった。

そして上空に留まるヘリコプターの風切り音。


「てか何で俺の居場所がバレてるんだ!?」


そう叫んで俺は屋上へと飛び出す。

下からはかなりの足音――人数が昇って来ていたので、狭い場所を抜けるより、屋上から飛び降りた方が手っ取り早いと判断したからだ。


俺が飛び出した瞬間。

ヘリコプタ―に積まれたマシンガンが火を噴く。


戦闘ヘリ!?

銃の時も思ったが、こいつら俺を殺す気満々だ。

H目的かと最初は思っていたが、余りにも殺意が高すぎる。

殺すのが目的なのだろうか?

兎に角俺は降り注ぐ銃弾を掻い潜り、マンションから飛び降りた。


当然追って来るヘリ達。

だがスピードは此方の方が早い。


壁を蹴り別のマンションの側面へ。

そしてそこでも壁を蹴り、壁から壁を跳躍してヘリを引き離す。


「ここまでくれば大丈夫だろう……」


そう思いたかったが、撒いたはずのヘリの音が此方に真っ直ぐ向かって来るのが聞こえる。

ジグザグに飛んできた。

蹴った壁面にも痕跡が残らない様最新の注意を払って。

なのにヘリは間違いなく俺の居場所を捉えている。


「まさか衛星から監視でも……そうか!?」


全地球測位システム。

略してGPS。

2年前の時点でスマホにはほぼこの機能が搭載されていた。


「これが原因かよ!?」


一瞬地面に叩きつけようとしたが、咄嗟に手を止める。

これを手放せばネットの貴重な情報が手に入れずらくなってしまう。

俺は画面を開き、設定からGPSをオフにしてポケットに突っ込み。

手近なマンホールから下水に飛び込んだ。


「うわくっせぇ!」


鼻がひん曲がりそうなくらい臭かった。

折角不潔な異世界から帰って来たというのに、これでは何も変わらない。

だがGPSを切ったとはいえ、監視カメラやその他の手段で場所が特定される危険がある以上、あまり往来を動き回るわけにもいかないのだ。

俺は我慢して下水の中を突き進む。


目指すは川。

川に出たら魔法を使って水中を移動する。

流石に川の中にまで監視するようなシステムは無いだろう。


そして川から海に向かい、海岸線に沿ってどこか離島などに仲間がいないかを探す。

もし仲間が見つからない様なら、最悪海外を目指すとしよう。

今の俺なら海を渡って外国に行く程度楽勝だ。


「下水の流れに沿って行けば川に出るだろ。きっと」



おれは先の見えない暗闇の中。

希望の明かりを探す放浪の旅に出る。

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