鬼ごっこ
「男よ!男がいるわ!」
女装して買い物をしていたのだが、バレてしまう。
女達が俺を取り囲むが、俺は大きく跳躍してマンションの屋上に飛び上がった。
下を見ると女達がマンションに駆け込む姿が見える。
「やれやれ、何でバレたんだ?」
俺は荷物を抱え、別のマンションの屋上へと渡る。
これでもう女達は追って来れないだろう。
まあこれもあと少しの辛抱だ。
今ソーニャが性別変更の装置を作ってくれている。
雌ゾンビ化はもう解けていた。
今は種の危機を本能的に感じて、雄である俺を追いかけまわしてはいるが。
性別変換装置が完成して、男を増やせばそれも落ち着くだろう。
因みにオーガニック星人は全滅している。
別に俺が皆殺しにしたわけではない。
俺はオーガニック星人のコロニーに乗り込んだのだが、俺の力を見た彼らは勝ち目がないと判断するや否や、全員自害してしまったのだ。
そのあまりの諦めの速さは、もはや見ていて壮観レベルだった。
かくして俺は宇宙船にあった薬品を手に入れ、地球上に散布して雌ゾンビ化を解除した。
もう携帯の縛りレベルの寿命からは開放されているため、人類が直ぐに滅びる事は無いだろう。
「勇人さん。買い物は終わったんですか?」
「ああ」
耳に付けてある装置からソーニャの声が聞こえる。
彼女と連絡を取る為の長距離無線装置だ、
「けどなんでか女装がバレちまったんだ」
「たぶん。オスを求める余り感覚器官が鋭く発達してきている為だと思います。生物は生き残るために様々な進化を繰り返してきました。その一種です」
厄介極まりない話だ。
折角ここ数か月ゆっくりできたていたのに……
「なるべく早く装置の完成を頼むよ」
「勿論です。勇人さんは誰にも渡しませんから」
「え?それってどう――」
その時、俺の目の前に一体の戦闘ヘリが姿を現す。
その銃口は俺に向けられている。
「やれやれ、厄介なのにみつかっちまったな」
「投降しなさい!殺してでも手に入れます!」
投降の呼びかけと同時に銃口が火を噴いた。
殺してしまったら意味がないだろうに、男を求める余り、理性が飛んでしまっている様だ。
「へっ!捕まえられる物なら捕まえてみな!」
俺は雨あられと降り注ぐ銃弾の嵐を掻い潜り、跳躍する。
俺は勇者だ!
鬼ごっこでは負けないぜ!
捕まえられる物なら捕まえて見やがれ!
こうして鬼ごっこは続く。
俺と、世界中の女との鬼ごっこは。
完




