いざ!宇宙へ!
「気を付けてください。勇人さん。いくら虐殺を嫌うとは言っても、直接乗り込めば確実に反撃を受ける筈ですから」
「ははは、大丈夫!全員返り討ちにしてやるよ!」
俺が力こぶを作ると、ソーニャは微妙な表情になる。
別に俺の言葉を信じていない訳ではない。
信じているからこそ、この表情なのだ。
彼女の半分はオーガニック星人の血が流れている。
そのオーガニック星人がぼこぼこにされると聞いて、素直に喜ぶ事は出来ないだろう。
「まあ、一応話し合いは試してみるよ」
やっている事は侵略以外何者でもないが、それは自らの生き残りをかけた物だ。
それが悪とは誰にも断定できない。
女性化した人間が元に戻る事は無いが、彼らが素直にゾンビ化を解いてくれるならば、話し合いの余地はまだあるだろう。
「気にしないでください。只の感傷ですから」
そう言うと、彼女は小さな金属のキューブを俺に手渡す。
これはエアーZと言われる装置で、水を空気に変える謎の超技術装置だ。
何でもこれは異世界に繋がっているらしく、無限に空気と水を生成する能力があるらしい。
これがあるからこそ、オーガニック星人は広大な宇宙を渡って来れたのだ。
「ありがとう、ソーニャ。これがあれば100人力だ」
俺はこれから宇宙――月の裏側へと向かう。
俺の最大のネックである息継ぎがこの装置によって補完された今、俺の行く手を阻むものは最早ない。
「でも本当に大丈夫なんですか?勇人さんの力は凄いとは思いますが……」
ソーニャは心配そうに俺の顔を覗き込んだ。
大丈夫というのは、生身で宇宙に向かう事。
そして一人でオーガニック星人達と戦う事になるかもしれない事。
その両方に向けての言葉だろう。
だが何も問題ない。
「ああ。本気を出した俺は、さっき見せた力の比じゃないから安心してくれ」
彼女には俺の力の一端を見せている。
勇者と認めさせるために。
だが所詮は一端でしかない。
それは女ゾンビに察知されないためのちょっとしたデモンストレーションでしかなく。
俺の本気からは程遠い。
宇宙に飛び立つのも楽勝なら。
相手が宇宙人だろうと、俺は負けはしない。
何故なら勇者だからだ(キリッ
「んじゃ、言って来る」
軽く手を上げて、から地面をける。
ゆっくりと、程々の力でだ。
力いっぱい踏み締めると地割れが出来てソーニャが落っこちかねない。
「勇人さん!」
ソーニャがみるみる小さくなっていく。
とは言え、この程度の推力では大気圏はおろか、エベレストも飛び越えられない。
ではどうやって行くのか?
応えは至ってシンプルだった。
多段ジャンプ。
ゲームとかで良くあるあれだ。
柔らかな水も、高所から飛び降りて叩きつけられるとコンクリートの様に硬くなり。
時速80キロの車から手を出すと、空気の流れはオッパイのような感触になる。
原理はこれと同じ。
馬鹿みたいなパワーとスピードで大気を蹴って足場に飛ぶのだ。
俺は足を力いっぱい踏み出し、空気を蹴る。
確かな感触。
まるで大地を踏み締める可の様に俺は跳躍し、ぐんぐんと高度を上げる。
これを繰り返せば、やがて成層圏を突破し。
やがて宇宙に飛び出すだろう。
そこからは魔法で生み出した炎をロケットエンジンの様に使い。
推力として月へと向かう。
流石に宇宙空間では、足場にする空気がないからな。
「待ってろ。オーガニック星人ども。今この勇者勇人様がそっちへ行くぜ!」




