地下壕
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〜マヤ視点〜
「......!!」
「......オイ、テメ誰だ。何の用だ。」
その声でハッと我に帰る。
「ごめんなさい。谷底を歩いていたら偶然、この洞窟を見つけたものだから......つい、中へ...。」
「あ゛?てことは冒険者か.....。谷を下りる冒険者なんているんだな、変わってる。」
......否定できないわ.....
「あの、お邪魔でしたら」
「いや、邪魔とかじゃねぇ...お前、1人か?他に誰か...」
「あぁ!でしたらもう1人、相棒がもう一方の道に..」
「はぁああ゛!!!?....左か?左に行ったのか!?」
「え、えぇ。」
「“えぇ”じゃねぇよ!どうす..」
[ グゴォオオオオアアアア!!! ]
「「!!!!!!」」
地響きのような雄叫びに身体中が震え上がる。
「!?何この声...」
「クソッッ!!起こしやがった!!!」
相手は武器であろうハンマーを持ち、部屋を大急ぎで出て行った。
!? 起こしたってどういうこと!?一体何を!?
とにかく、走っていったあの人の後を.....!
「起こしたって何をです!?エドは何を..」
「エドっつうのかその大馬鹿の名前は!!名前覚えたからな!!死んだら末代まで祟ってやる!!」
「....!!ここには何が..」
「噴火以上の災厄だ!!触れなきゃ起きねぇのにやりやがった!!!」
「(噴火以上の災厄....!?)」
何度も自分の中で反芻する。そんなものがこんな所に眠っているなんて.....!!
「テメェの相棒が死んでたら!!今度は俺らの番だ!!」
左の道の坂を急いで下っていく。足場の悪さに体制を崩しても無理矢理下りる。止まっている暇はない。
あの雄叫びは、もう止んでいた。
「曲がり角の奥だ!!ソイツが死んでたらとっとと俺ァ逃げるからな!!」
「.......!!!」
生きてて、エド....!!!
「ていうかもう確実だな!!主を目覚めさせて生きてるわけが.........
勝ってやがる.....。」
...角を曲がり辿り着いたその先、恐ろしい化け物の亡き骸の上で、鞭を握り、緑の液体を浴び、項垂れているエドを見つけた。
辺りには、ゲル状の何かが激しく飛び散っている。.......生き物だったものかしら...。
「エド....?エド?」
呼びかけるけど、一向に振り向かない。
その後ろ姿は、なんだか虚しそうで、苦しそうで........
...淋しそうに見えた。
〜 エド視点 〜
「....オイ、起きろ、起きろよ。ハロー?なぁ、オイ......。
.......バジリスクも撃ててねぇぞ.....こんなんじゃ...........こんなんじゃ、また......!!!
!」
「エド...?大丈夫...?」
...マヤ......
「お前!!倒したのかよっ!!?マァジか信じらんねぇ!!!ハッハ!!スゲェな!!」
.....と、テンションの高ぇ男。
「おいガキ!お前の相棒ヤベェな!!勝つ奴いたのかよ主に!!」
......主...?あぁ、コイツか。
とにかく、
「マヤ、その隣の人は?」
「この人は....えぇと?」
「“ ガロ・バロウ ” だ!アンタは!?あ、ついでにお前も。」
「......マヤ・ルーツカ。」
悪い奴ではなさそうだな。...!まさか...!
「エドワード・バンディだ!もしかして、この洞窟は...」
「あぁいい気にすんな!俺のモノって訳でもねぇからよ!まぁ、詳しいことはトロッコで話す!地下壕に来いよ!歓迎するぜ!風呂と洗濯が必要だろ!?」
.....!! 俺こんなに汚れてたのか!!
「あぁ悪い!ぜひ頼みたい!マヤ いいか?」
「ええ、勿論。」
「決まりだな!っと、その前に.....ちょっと付き合ってくれ!すぐ終わるから!」
その言葉に従い、主の死体から降りた俺は マヤと一緒に、ガロと名乗った青年(?)の後をついていった。
.......あのナリで男なのか......
ーーーーーーー
「ここは地下壕で使う食材の貯蔵庫になってんだ。チーズに酒、その他色々保存してある。」
そう言って、必要なのであろう分の酒を持って来た。
よく見れば、意外としっかり筋肉がついている。
.......男の顔じゃねぇよな......ビックリだわ....。
「元々ここは、あの主と蟻のモンスターの住処だったんだ。でも貯蔵庫に丁度良いってんで、ちょぴ〜っと開発しちまってな。」
「肝座ってんだな。」
「直に攻撃しねぇと起きねぇみてぇでよ。工事で多少うるさくしても全く起きなかったらしいぜ。」
洞窟を出てトロッコに乗り込む。意外と広く、全員乗っても余裕があった。
「地下壕ってどこにあるの?」
「10分ぐらい行った頃だ。さぁ行くぜ!」
ガタ ガタン とトロッコが走り始める。この為のものだったのか。
「俺達の地下壕は蟻の巣穴みてぇになってんだ。かなり広いんだぜ?地上と繋がってて、怪我した冒険者やら魔道士やらを介抱してやってる。全員は無理だが、見回ってるウチの奴等が見つけた分だけは、ちゃんとな。」
「へ〜!怪我したらそこでオシマイだと思ってたぜ。救いはあるんだな。」
一応な。とガロが付け足す。それでも冒険者には心強いだろうな。存在を知っていればの話だが。
そうして走って行くうちに、いよいよ近くへと来たらしい。
「着いたぜ!ここが俺らの地下壕だ!」
ただの岩壁に見えたが、そこには確かに扉があったらしく、ガロは慣れた手つきでそれを開けた。
「さ、入れよ。」
促されるままに進む。
身体中がベットベトだ......。
「良かったわ。その服もどうにかしないといけなかったし。」
「あぁ、ホントにな。」
冷たい地下壕の道を進んでいく。
..........今日のところは、もう大丈夫そうで良かった。
明日 明後日が問題だ。.......この“麻薬”が切れてしまえば、また俺は.......。
地下壕
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