新たな旅立ち
更新しました!短いですが、どうぞご覧ください!
翌朝、少しだけゆっくり起きた俺達は、それぞれ身支度をし、食堂で朝食を済ませた後、船着場へと歩き出した。道中の町の風景を、目に焼き付けながら。
船着場は沢山の人で賑わっている。
俺達のように次の場所へと移る人や、ツアーとして参加している人、他にも様々だろう。
「この船はエスターシャ行きです。お乗りになりますか?」
「ええ、お願いします。」
そう言って料金を手渡す。
マヤは自分で出すと言うが、これぐらい奢ってこその男だろう。出した財布をしまわせて、不本意そうな顔は無視しておいた。
「私のこと子どもだと思ってるでしょ。だからこうやって甘やかして....」
「違うって。ただ、日頃の感謝としてな。」
「.....あなたの親じゃないわよ。」
ムッとした表情と声色で言うもんだからつい笑ってしまった。
そうだな!親じゃないな! と笑うと、からかわれたのが気に食わなかったのか、マヤの眉間にがっつりシワが寄る。その後素直に謝ると、いつもの表情に戻ってくれた。
でもそうか。確かに、日頃の感謝=親に対するものって感じするよな、イメージ的に。
...親に恩返しか.....。
前世は虐待のせいで親に尊敬の念なんて抱けなかったし、今世はまず恩返しなんてする暇なかったからなぁ。
転生したというからには、俺にも勿論親がいた。
両親とも、俺が幼いうちに家を出てったけどな。
まだ殺し屋を始めていない頃だし、お利口さんを演じきれていたから、俺が原因ではないと思う。
つくづく親には恵まれねぇが、そう言う俺も、ろくな親にはなれなかった。蛙の子は蛙ってやつなのかね。本当に嫌になる。
....ってこんなの、楽しい船の上で考えることじゃねぇな。
連想力が豊かなのかなんなのか、つい過去のことに今を結びつけてしまう。明らかな悪癖だ。直そうとしてもどうしても直ってくれない。
「今日も良い天気で良かったわ。ねぇエド。」
「ん?フフ、そうだなぁ。快晴とまではいかないが、気持ちがいいな。」
手すりに寄っかかって空を見上げる。昨日よりも優しい空だ。
「おはよう、旅の人かの?」
1人のご老人が声をかけてきた。この人のこの感じ、間違いなく魔道士だ。
「おはようございます。そうですよ。エスターシャで降りる予定なんです。」
「!おはようございます。」
風景に夢中になっていたマヤも、気付いて挨拶を返した。
「おや?そちらにも...いや、すまんの〜!君が大きすぎて、その子に気づけなかったわい!」
「あはは!それはしょうがない!」
「.......。」
マヤがまた不服そうな顔をしている....。身長いじりは地雷らしい。
「ま、まぁ、とにかくそうです。旅っていうか、冒険ですけどね。」
「だったらエスターシャへ向かうのは正解じゃな。あそこはいい!冒険者達が集う街だからの!実力者もうようよおるぞ〜!」
「うようよ!?へー!」
実力者と聞けば興味を持たずにはいられない。
「エスターシャ自体は小さな街なのじゃが、そこを出れば、いよいよ壮大な冒険が始まるのじゃ。どこへ行ったって間違いではない。冒険者にとって、全てが最高の道となるからじゃ。弱い奴らはすぐに死んでしまうじゃろうが、強い奴らにとっては、まさにもってこいの舞台!恐怖も未知も不思議も意味不明も、そこら中にゴロゴロ転がっておる!」
「.....!!何ですかその夢見たいな話は...!!」
これでもかとロマンをブチ込んだような話だ.....!
マヤも目を輝かせて話に聞き入っている。
「しかし、気をつけねばいかんぞ?私のような魔道士が修行の場として使うほど、モンスターがとにかく強いのじゃ。」
「モンスター....街には出ないんですか?」
「もちろん出るとも!だからこそあの街は強い用心棒を何人も雇っておる。」
ぜひそいつらとも戦いたい。ポリシーを破るようだが、殺さなければいい話だ。
「まぁ着くのは明日になるがの。着くまではゆっくり、船の旅を楽しめば良い!」
「そうですね!でも着くのが待ち遠しいな〜。」
「私達以外にも、エスターシャで降りる方っているんでしょうか?」
「おそらく、いないじゃろうな。殆ど観光がしたいだけの連中じゃろう。じゃから、君たちに声をかけたのじゃ。このワクワクを共感してもらいたくての。」
「声をかけてくれてありがとうございます。おかげでさらに到着が楽しみになりましたよ〜!」
「ホッホ!それは良かった!」
エスターシャに着くまで1日。それまではゆっくり、想像を膨らませながら過ごすとしよう。
早く明日にならねぇかな....!
〜新たな旅立ち〜
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