リリンシータニー 4
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「で、何?話って。」
マヤが甘いものを食べたいと言うので、宿へ向かう前に近くの喫茶に立ち寄った。
マヤは苺の果肉入りのシャーベット、俺は迷った挙句紅茶ではなくコーヒーにした。....ミルクや砂糖を入れても、紅茶よか不自然じゃないからな。
「マヤが俺に話してくれた、あの鳥人族とかのことなんだけどな。」
「ああアレ。」
「あれ全部この世界のことなんだと。」
「.....そうなの!?」
本気で驚いている...。深くは知らなかったのか。
「船頭のクラウスから聞いたんだ。天空階段は怪談、海底都市はおとぎ話らしい。...それぞれかなり暗い話で、夢なんてなかったぜ。」
「嘘.....。」
魂が抜かれたように固まっている.....夢を壊してしまい申し訳ないが、真実はちゃんと伝えておいた方がいいだろうしな.....。
「クラウスに驚かれたんだぜ?なんでそんな暗い話ばっかり知ってるんだって。」
「....私、話は全部お父さんから聞いたの。お父さんは旅人から聞いたって言っていたわ。だから話が不明瞭だったのかも。」
やっぱり人伝いだったか。
...それにしても、お父さんか....。
「....なぁ、ずっと聞きたかったんだけど、“娘だった”って、どういうことなんだ?もし言いたくなければ、無理しなくてもいい。」
「...私のお父さん、話を私にしてから 1週間後にいなくなったの。」
「....!失踪、ってことか?」
「そう。...農家の人が言うには、自分達の静止も聞かずに、あの森に入っていったんですって。朝早く、日も昇らないうちに。」
森.....!...そうか...。
「死亡扱いにされたんだな...。」
「ええ。...でもどうかしらね。あのお父さんのことだから、意外と生きてるかもしれないわ。ひょっとしたら、私達みたいに山爺のナゾナゾに正解して、この世界に飛ばされたかも。」
.....ポジティブだな。改めて、強い子だ。
....あ!
「マヤ、お前が急に意見を変えて 山を越えようなんて言い出したのは、お父さんの後を追うためか?」
「いいえ?そこにお父さんは関係ないわ。」
「じゃあどうして急に?
「あなたが怖かったの。」
「....え?」
少し耳を疑った。どういうことだ?俺が怖かった?確かに最初はクソガキだと思っていたが、その時も今もずっと、危害を加えるつもりなんてこれっぽっちも無いのに。
「あなたが、自分は元殺し屋だって話した時、本当は凄く怖かったの。なんで一緒にガスタノスを狩ろうなんて誘ってしまったんだろうって。」
...........。
「相棒のお誘いをする頃には、考えは180度変わってたけどね。面白い人だ、って。」
!!
「でも、適当な日数を一緒に過ごしてから、山へ向かった方がいいと思って、先延ばしにしたの。あなたのこと、その時はまだ信頼し切れてなかったし。ちゃんと関係を築けてから挑もうと思って。」
「そういうことか...!なぁ〜んだ!なるほどな!...でも2日ぐらいだぞ?その期間。」
「もう大丈夫かなって思ったんだもの。」
「テキトーだな!」
「適当な日数って言ったでしょ?」
そうですけどもね...。
......そういえば、マヤは最初から、森に入ることを躊躇していなかったよな。
そのくらいだから、山のことも、大して怖くはなかったのかもしれない。
.......あの時言ってた“怖い”は全部、俺のことだったのか...。
怖がられて当然なのに、女々しいな、俺は。
まだ子どものマヤがあんなに強いのに、大人の俺がこんなに弱いなんて、本当に情けない。
「エド?コーヒー冷めるわよ?」
「え?ああ!そうだな。」
「あなた時々ぼーっとするわよね。悩みとかあるの?」
「いや、ただ呑気なだけだ。大丈夫。」
「そう?ならいいけど。」
心配までされて......!お前本当に大人かよ馬鹿野郎!
「(強くならないと....。」
「?あなたもう十分過ぎるほど強いでしょ。」
「ッ゛!!? 」
「ちょっとぉ。」
危うくコーヒーをこぼしかける。
声に出してたのか俺!?うわキモい!!
他人に興味持てるようになってから、自分のことはとんと嫌いになるばかりだな...。
ーーーーーーーーーーー
宿に着き、それぞれ大浴場で入浴を済ませてゆっくりした後、マヤに旅行船のことを話した。
丁度宿の窓から船着場が見える。船の灯りがとても綺麗だ。
「船!良いわね!乗りたい!」
「そうか!じゃあ明日は船だな!」
今日だけでなんか色んなことが分かったな〜...。
情報量の多い1日だった.....。
「明日は早起き?」
「しなくてオーケー。ぐっすり寝ろよ〜。」
色々あったが、なんだかんだ楽しかったな。
....明日も楽しみだ。
......眠れない.....遠足前か!
〜リリンシータニー 4〜
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