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星羅の月 十三日(晴れ)
星羅の月 十三日(晴れ)
三日前にも来た子供がお店まできた。
当日になっても、気になる子と星を見たいと目標は変わらず諦めてもいなかった。
また来るかもと予想はしていた。来たら、どんな対応をするかも考えてあった。
他にお客さんがいないかを、しっかりと確認してから、試作の薬をその子に渡した。
この子の悩みに薬は必要ないと結論を出したのに、結局薬を使った。すぐに魔法薬で解決しようと考えてしまう。私らしいかもしれないけど。
渡した試作の薬は、名付けるなら超成長薬だ。使い方は簡単。植えたばかりの植物の種に少量垂らす。すると、あっと言う間に芽が出て育って枯れていく薬だ。種は取れないし、葉や茎は形だけで内側がスカスカになる。短時間の鑑賞をするための薬としてしか、今の所は価値観が浮かんでいない魔法薬だ。
念の為、人が飲んでも影響がでないようにしてある。
変わったものを二人で見られれば、きっと距離を縮めてくれる。その先は、あの子供の意思による。
今夜はよく星が見える。本当によく見える。今頃、あの子供は上手くやっているのだろうか。それとも……。後悔はしないでほしい。