星羅の月 十日(曇り)
星羅の月 十日(曇り)
今日は比較的普通の日だった。
お店を開ける時間を少し短め、早い時間に閉めたくらい。
ただ、一人だけ珍しいお客さんがいた。歳が十くらいの男の子だ。服装から察すると、少し貧乏に偏りそうだった。服に数箇所、パッチワークが施されている。
親御さんと来てくれたならわかるのだ。しかし、その子は一人できた。
私のお店には、おもちゃは置いていない。お菓子はあるけど、子供の口に合うものではないはずだ。結構苦いものとかもあるし。
子供が遊びに来たいと思えるお店ではないはず。つまり、子供が魅力を感じるお店にできれば客足が……。
話をしてみると、その子は惚れ薬を欲しがっていた。確かに魔法薬であれば、その手の薬も調合できるでしょう。幻惑の魔法を使えばいい。
どうやら、気になっている子がいるらしい。一緒に星を見に行きたいとか。
近々、星がとても綺麗に見える日が来るそうだ。その日までに誘える気がしないから、惚れ薬に頼りたいということだった。
ちょっと心苦しいけれど、力になるのは難しい。私が惚れ薬を作ったとして、その子は代金を払えそうにない。そもそも、他人の心を惑わす薬は法で禁じられている。自分を惑わすだけなら、ギリギリで線の内側だけど。だから惚れ薬は作れないし渡せない。
でも力になりたいとは思った。必死な子供とは、なんとも可愛らしい。魔法薬まで持ち出すつもりはないけれど、私に出来ることがあるなら手をかそう。