剥離の月 十三日(雨)
剥離の月 十三日(雨)
色が入れ替わって見える、他人薬ができあがった。ちょっと無理をして、なんとか完成させた。
効能は、期待通りではなかったけど、十分な効果は確認できた。私にかかればこんなものよ。
無理をしたわけで、痛い出費になった。無駄になった溶液も多くて嫌になる。それでも完成させたのだ。
作ってわかったのは、この薬は危険な面が大きいこと。身体、主に視力に影響が出るみたいだった。視力がよくなるならよかったのだけど、悪くなっていく。
どうやら精神的な面にも作用する。感情が高ぶりやすくなって、日常生活にも影響が出る。危ない薬物の区分に入りそうだ。それだけ効果が強い。
精査水で薬の出来を調べて、異常な反応が出た。魔法薬は、魔力によって薬の効能を捻じ曲げているので、度々こんなことがある。でも、規模では過去最高の異常だったかもしれない。
今回起こった異常は、上下左右が非対称の結晶ができあがったことだ。バランスがいい安全な薬は結晶ができても綺麗な形になる。他人薬はそうならなかった。材料が悪かったのかな。
少しだけ勿体無いけど、処分になりそうだ。
使うわけにはいかないし、誰にも使わせるわけにはいかない。




