剥離の月 六日(雨)
剥離の月 六日(雨)
新しい薬を作るのはいつでも楽しいものだ。自分で考えた薬だったら尚更。今日はまさに楽しい日だった。
暑さに備える清涼剤を作る。そのためにいろいろと考えたのだ。
皮膚に塗るタイプや飲むタイプ、その辺りは基本になっている。薬屋にある清涼剤の殆どは、この二種類に分類される。だって作るのが楽だし、使い方がわかりやすい。
私も今日、何種類か作った。視界が広がって夜目が効いたり、体力が回復する効果を付けたりしたけど。
今回、私が作った全く新しい……とはいかないけど、珍しいかもしれない形の清涼剤がある。
それは持ち歩くタイプだ。
日常になった香水作りをしていたら思いついた。
持ち歩いて香りを振りまく。その香りで気分が爽やかになるのだ。
今思えば、全然珍しくもないや。なんで思いついたとき、はしゃいだんだろう。
魔法薬として作った。そのため他と比べて高いし、ちょっと特殊になっている。
この清涼剤の香りは、周囲の気温を下げる効果がある。
不快感を取り除くのではなくて、不快感を抱かせないという手法を取っていると考えると、やっぱり珍しいのかもしれない。
良いものだと個人的には思っている。でも売れないと意味がない。値段が高くなるのが唯一の懸念点だ。さてどうなることやら。




