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豊艷の月 十九日(晴れ)
豊艷の月 十九日(晴れ)
試しに、幻聴が聞こえる魔法薬をお店に置いてみた。
幻聴とは水の音だ。私が桶から桶に水を移し替え続ける音を取り込ませた。水が重くて腕が痛くなった。
風情に欠ける音だけど、まあ悪くはない。
原価同然の値段にしたけど、それでもまだ高い。
これで売れなければ、私が自分で使ってしまうとしよう。もしくは誰かへの贈り物がいい。
じっとしていたら時間が過ぎた。外を眺めるというのも、なかなか楽しい。
最近良くやる、そんな一日で今日も終わった。
お客さんはいつもどおり。常連さんが三人と、一見さんが六人。魔法薬が二本も出たから、売上はいつもの二倍以上ある。
夕日が綺麗で、相変わらず平和な一日だった。




