355/378
豊艷の月 十日(曇り)
豊艷の月 十日(曇り)
また空色が怪しくなってきたけど、今日は何も降らず、無事に乗り切った。
最近では天気が最大の関心事である。それもこれも雪が足を鈍らせたり、足先が痛いほど冷えるからだ。
サンクシエカの人々は過剰なほど働き者のようだ。もはや目につく所に、雪はほとんど残っていない。魔法薬というズルをした私よりも、ずっと効率的に雪を退かしていたようだ。昨日の太陽が掃除に一役買ったのも間違いないけど。
もはや雪は路肩に少し残るくらいだ。それと、私のお店の裏手にも残っている。
好き好んで踏みに行く子ども以外に、雪を踏む人はもういない。
街は平常通りに戻っていた。人気店は人気を取り戻していた。
それに引き換え、私のお店は相変わらず閑古鳥が鳴いている。今日は一見さんがゼロだ。




