朝露の月 十日(晴れ)
朝露の月 十日(晴れ)
眠気を取り除く薬が完成した。例のごとく、今日も眠気を取り除く薬を注文してくれたお客さんが来た。
矢のように来て、突風を吹かせて帰っていった。丁度そのとき、お店にいたお客さんが目を剥いたほどだ。
夕方に、また眠気を取り除く薬の注文が入った。同じお客さんからだった。
まだ一晩も過ぎていないのにやってきた。
転売ないし、本来とは別の方法で使っているのではないかと疑って用途を訊くと、どうやら学生さんらしく年末の試験に向けて猛勉強中だと判明した。そのために寝られないそうだ。
既に眠気は限界を突破していたようで空元気を振り撒いていたけど、瞼の重さは通常の数倍かそれ以上に跳ね上がっている。知らぬ間に鉄を仕込まれたような瞼が、私の魔法薬で軽くなったらしい。
お客さんは、完全に薬が尽きないように、早速補充をしようと考えたようだ。
懸命と言えるかもしれない。でも無理やり起きての勉強に意味があるのか疑問だ。あの魔法薬は眠気は取っても疲れを取るわけじゃない。疲労は貯まる一方になる。
疲れを取る魔法薬を付けようか。
一つ気になることがある。そこまでして試験で成績を残す意味があるのだろうか。お客さんの注文は全部合わせると相当な本数だ。全て魔法薬だから、とんでもない額になる。
学生には不相応な数字だと思う。ふた月は過ごせるだけの金額になる。本当に払ってもらえるかも不安だし、今からでも止めたほうが良い気がする。




