混濁の月 二十五日(晴れ)
混濁の月 二十五日(晴れ)
不思議な朝食と出会った。ろ過装置のような器具がテーブルにやってきて、そこから下りてきたものを食べるという、見方によっては汚い印象になる食事だった。
今朝はそれで済ませたのだけど、あれは美味しかったのだろうか。寝起きすぐで、舌もまだ本調子じゃなかったからあまり味を覚えていない。
不味くはなかった。満腹になれたのがその証拠だ。
食事の後、少し運動をしてから底なし池へと向かった。気持ちの良い晴れ具合だったから道中も楽しめた。
底なし池には巨大な魚が住み着いているらしい。そういう噂が昔からあるとか。目撃する人はいても、捕まえた人はまだ誰もいないらしい。
ならば、私が捕まえるしかない。そう精力的にはなれなかった。目撃者に名前を連ねるだけで精一杯だ。現実は、見ることすら叶わなかったけど。
底なし池は森に囲われるようにしてあった。大きなコテージがあって、そこで釣具だったり小舟を借りたりできる。
底なし池と言うけれど、深さがすごいだけじゃない。大きさもあるのだ。もはや湖だった。二つの池が合わさって今の形になったそうだ。その当時の呼び名がずっと残っているのだとか。
私は池を一周するだけで満足した。それ以上は欲張りというものだ。一周するだけでも大変だったし、明日には帰るからその準備もしないといけなかった。トトノ尾も買わないといけなかったし。
何も起こらなかったけど、多くが詰まった一日だったのかなと思う。
帰る準備は億劫だったけど、私物がなくなって、大風車園に来た初日のように綺麗になった部屋を見たら、なんかちょっと、なんだろう、不思議な感じがした。
この部屋とも今晩までで、明日になったらお別れだ。短い時間だったけど、長かった気がする。これは勘違い以外のなにものでもない。




