混濁の月 十七日(雨)
混濁の月 十七日(雨)
買い物ができるようになる魔法薬、それ自体は完成した。思っていたよりも早く完成した。
初めて精製する魔法薬だったけど、失敗はしなかった。我ながらいい出来だ。
完成したのは、朝、私がお店に入ってすぐだった。買い出しがいつもより若干早く終わって、空いた時間で魔法薬を眺めていたら、ちょうど完成したのだ。
完成はしたけど、すぐにはお客さんに伝えなかった。本当に売っていいのかと悩んだからだ。
望んだ通りの効果で、品質も十分だった。でも、そもそもの効果自体が粗悪なのだ。魔法薬らしくない。
でも約束をした以上はお客さんに渡さないといけない。私自身そのつもりだったし、今更気が変わったなんて言えるわけがない。
そのお客さんは鼻が利く。今日の夕方前に、お客さんがやってきた。
以前注文してくれた、掃除ができるようになる魔法薬と、料理ができるようになる魔法薬、この二つの注文から完成までの時間を元に推測して、今日完成すると見切ったのかな。
買い物ができるようになる魔法薬を見て、お客さんは喜んでいた。私はあまり喜べなかった。
利益が出ているのに暗い気持ちで居るのは違うと思うんだけど、どうあっても私は納得できなかったと思う。
お客さんは近々この魔法薬を使うそうだ。私の心配は尽きない。効果時間が短いから、場合によっては買い物の最中に効果が切れる。
助けになる魔法薬でも考えて、秘密裏に作るといいかもしれない。
でも、助けになるって、何をすれば助けになるのか不明だ。
いっそのこと、お客さんが魔法薬を使って買い物をしているときに、後ろから付けてみるか。そういえば、透明化の魔法薬という便利な液体が余っている。
ダメだ。町中で透明化は悪意に溢れすぎている。でも逐次様子を窺うのはいいかもしれない。
明日、予定とかをお客さんに訊いてみよう。補助できるかもしれない。




