混濁の月 十六日(雨)
混濁の月 十六日(雨)
なるべく時間を作るために、朝食は昨日の残り物にした。多くの時間を魔法薬に注ぎたかったのだ。
今日は買い物が出来るようになる魔法薬に時間をつぎ込んだ。
実はこの魔法薬は作ったことがなかった。今日が初めてだ。だから少し不安がある。
買い物が出来るようになる魔法薬と銘打っているけど、その実、思考を誘導させる一種の幻惑薬だ。
決断力を高めて、必要なものを選べるようにする。
これには非常に大きな欠点がある。私がこれが嫌いなのだ。
人の欠点を補うようにする性格矯正は、魔法薬の効果が切れた後に自己嫌悪を生じさせる可能性がある。
魔法薬で欠点がなくなった理想の自分と、魔法薬が切れた後の現実の自分を比べてしまうのだ。自覚していた自分の欠点がより鮮明に見えてしまう。想像するだけで楽しくはないのはわかる。
そうならないようにするにはどうすればいいのか。それが今の課題だ。
魔法薬で欠点を補強するんじゃなくて、潜在能力を引き出す方向にできればいいんだけど、それは無理に等しい。
結局、欠点がある魔法薬を作るしかなかった。
初めて作る魔法薬だけど、精製の難度は低い。もっと高度な魔法薬を作っている私からしたら、こんなの児戯だ。それでも初めてなのは事実だから、慎重にやったけど。
買い物ができるようになる魔法薬は、近々完成するはずだ。失敗するとしても、一回か二回で収められる。
それまでに、買い物が出来る魔法薬の説明を考えておかないと。




