混濁の月 十四日(雨)
混濁の月 十四日(雨)
昨日ほどの豪雨ではないけど、雨は今日も続いた。
窓の外には昨日よりも明らかに人影が多い。昨日、籠もっていた分を取り返すために、今日は外に出ざるをえない事情もあるのだと思う。
今日の私は買い出しをサボって、空いた時間で遊んだ。
絵を描いた。子どもの塗り絵みたいに、色を置いていくだけ。余った材料の破片を砕いて溶かした。匂いが強かったり、水に溶けにくかったりしたものもあったけど。
そうやって時間を使っていたら、あっという間に朝が終わった。
お店を開けて、運が良くなる魔法薬の完成を依頼人に知らせた。今日はまだ取りに来ていない。
昨日とは打って変わって、今日の雨は心地よかった。静かな音、流れる時間。機械じかけの時計が秒針を揺らすように、窓枠から滴る雫が音を立てていた。
今日のお客さんも少なかった。でもダメになりやすい品がいくつも捌けたのはよかった。
幸いなことに、お店を閉めて帰る直前くらいに雨が止んだ。今では雲も退いている。
今夜は星がない。けど月がある。紺色の空が眩しい。
この調子だと明日は晴れかな。晴れってことは、街案内を決行することになるかもしれない。昨日の続きだ。
明日の朝、お店の前に人がいるかどうかで、一日の全てが決まる。できればゆっくりしたいのだけど。今更だけど、街を案内するなんて言わなければよかったかもしれない。
今の私なら、買い物ができるようになる魔法薬を作る気になれそうだ。




