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混濁の月 十三日(雨)

混濁の月 十三日(雨)


昨日の曇り空を見て、もしかしてとは思ったけど、まさか酷い土砂降りになるとは思っていなかった。

朝は雨音で起こされるくらいだった。街全体にカーテンが掛かって、馴染みの道は漏れなく川になった。

ままあるけど、珍しい強さの雨だった。


私だったら外出禁止令を出してしまう陽気だったけど、たまに街をゆく人はいた。その一人が私だ。


昨日、お客さんと街を歩くと約束をした。買い物に行く度、お店を探さなくて済むように、いいお店を紹介する小観光みたいな一日を考えた。


でもカエルすら逃げ出しそうな豪雨だ。約束は後日に持ち越しだと確信して、私はお店で魔法薬の在庫を増やそうと考えたわけだ。


お客さんが私のお店の前で待っていた。雨にやられて足元どころか腰辺りまで服の色が変わっていた。

風があったらどうなっていたことか。きっと私は家に籠もっていただろう。


なんと約束は雨天決行だった。


ちょっとした雨なら私もいいと思う。でも歩く度にチャプチャプ音がする日は、外出を控えるものだ。


でも約束は約束。傘をねぎらいながら、ネネッカ通りを始め、お店が立ち並ぶ主要な道を案内した。


昨日の私は、この案内の最中にいろいろとやろうと考えていた。食事はあのお店にしたいとか、雑談で何を訊こうかとか考えていた。


でも全部雨に流された。雑談なんて出来ない。声より雨音が大きくて聞こえなかった。大きな声を出し続けるのは大変だ。

傘を空に押し返しながら声も張るなんて、私にはできなかった。


徒労感が強かった。その一因は、閉まっているお店が多かったからに違いない。

とてもよくわかる。一日街を歩いていたけど、すれ違う人なんて数えるほどだった。


もし今日、私の魔法薬店にお客さんが来ていたら、そのお客さんは徒労になる。お店を開けなかったからだ。そのお客さんは思うだろう。この天候なら仕方がない。きっと店主は屋根のある場所でゆっくりしているのだろう。

まさか一日中、外を歩いていたとは思うまい。


結局、案内はまともにできなかった。閉まっているお店は見られないし、開いているお店も、自分たちのびしょ濡れ具合を思って入り難かった。もし商品を濡らしてしまったらと思うと。

私が魔法薬という、水気を無視できない品を扱っているから、特にそう思うのかもしれない。


今日は無駄足で終わった。解散は予定より早め。晴れた日に再度、で納得してくれた。

一日使って何をしたのか、自分のことながら全く理解ができない一日だった。ワトワリシャ山に登ったときよりも疲れた気がする。

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