混濁の月 十二日(曇り)
混濁の月 十二日(曇り)
今朝も、お客さんがお店の前にいた。家事ができるようになる魔法薬を注文してくれたお客さんだ。
連絡をするように言われたけど、それから一度すら連絡を入れなかった。伝える前に、既にお店の前で待機している。
食って掛かるように魔法薬の状態を訊かれた。一度なだめてから、お店の裏側に案内した。
料理と洗濯ができるようになる魔法薬は、共に良い色で微笑んでいるようだった。当然だけど完璧な完成だ。
そのときはまだ開店時間前だったけど、お客さんがお腹を空かせたように求めるものだから、すぐに売ることにした。
買い物ができる魔法薬はどうか尋ねられた。どうやらお客さんは、それも作っていると勘違いしていたようだ。作らないと言ったのだけど。言わなかったっけ?
お客さんはどうしても買い物ができる魔法薬を欲していた。それでも、買い物ができる魔法薬だけは、絶対に作らない。観光ガイドブックか、周辺地図を読んだ方が早くて安いからだ。わざわざ魔法薬にして売るなんて、ぼったくっているみたいだ。
買い物ができる魔法薬を作ってもらいたいお客さん。そんな魔法薬は作らないと決めた私。
話し合いの結果、私がお客さんを案内して、サンクシエカのめぼしいお店を教えることになった。
問題は、私はまだサンクシエカにそこまで詳しくないことだ。
主要な通りくらいは制覇したけど、裏道はまだまだ。
知り合いの誰かを巻き込めれば完璧かもしれない。でも、急な誘いじゃ誰も乗ってくれそうにないけど。
お客さんとの約束の日は明日だ。なんでこんな急なのか。あのお客さんはせっかちすぎる。明日でも遅くなった方なのだ。始め、お客さんは、今から行こうと強く押してきた。
大変そうだけど、でも楽しみだ。明日はお店をお休みにする。




