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混濁の月 十日(晴れ)

混濁の月 十日(晴れ)


寝坊した。夜ふかしもしていないのに寝坊した。

目が覚めたらお昼近くになっていて、買い出しどころじゃなかった。


朝食もそこそこに、急いでお店に向かったら、もうお客さんが待っていた。家事が出来るようになる魔法薬を注文してくれたお客さんだ。ここに住んでいるのかってくらい、よくいる。


相当な時間待たせてしまったらしい。私は呆れられた。


そろそろ魔法薬が完成すると察知して待っていたそうだ。連絡する必要がないのは助かった。

お客さんの推測は当たっていて、私がお店の鍵を開けたときには、掃除の知識を得られる魔法薬は飲める状態までなっていた。


取引はすぐに行われた。お客さんを長い時間待たせてしまったみたいだけど、取引の間は忘れる。迷惑を掛けたとしても、一銭たりとも負けはしない。私の魔法薬にはそれだけ価値がある。

お客さんは何も言わなかったけど。


念を押して注意を伝えた。復唱まで要求した。これはお客さんの気を荒らしたけど、とても大事なことだ。緩めるわけにはいかない。特に今回のお客さんは話を聞かない気がしたから。


取引の後に、買い物の魔法薬について尋ねた。お客さんは一体どんな魔法薬を想像しているのか。私は、買い物が出来る魔法薬と言われて、何も浮かばなかった。


お客さんが想像していたのは、どこに何のお店があるか把握していて、何の値段がいくらで、ついでに金額の計算ができる自分だそうだ。


その場で直接、お客さんに言った。それは魔法薬でやる意味が全く無いって。街歩いた方が絶対に安いし早いよ。計算は慣れるまでやればいいんじゃないかな。


とりあえず、料理と洗濯が出来るようになる魔法薬の完成を目指すことになった。

そう時間は掛からないと伝えてあるから、もしかしたら明日の朝にもお客さんが待っているかもしれない。


そう考えたら手がよく動いた。じっと私のお店の軒下で待ち続けるお客さんを想像したら、申し訳無さとか純粋さとかが混じって楽しくなった。気分が乗って想定していたよりも短時間で、良質の魔法薬になりそうだ。


ちょっと売るのが勿体ない。数日でいいからお店に飾っちゃダメかな。ダメだね。



夕食はいつもよりも高価にした。外食って時点で、通常時よりも豪華なんだけど、メニューの値段が高い物を選んだ。これは、料理の知識を授けてくれたお礼でもある。


掃除夫さんにも何かお礼をしたいけど、何を送ればいいのか想像できない。明日になったら、直接訊きに行ってみよう。

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