混濁の月 八日(雨)
混濁の月 八日(雨)
冴えない天気の中、今日はよく街を行った。
今日の私にとっての最優先は、家事が出来るようになる魔法薬の完成だった。一日で完成するはずがないけど。
そのために、真っ先に警務部へ向かったのだ。
朝の警務部はいつものように混んでいた。でも混んでいるのは受付で、私が用のある掃除夫さんの周りには誰も居なかった。
すぐに掃除夫さんへ突撃。邪魔だと追い返された。
掃除に関して教えてもらえないと、魔法薬を作れない。しかし何度頼んでも教えてもらえそうになかった。
そこで、観察をした。やってはいけないことは学べないけど、効率的に掃除をする手順とかなら見ているだけでも掴めるかもしれないと考えたのだ。
聞くよりも確実性が薄くて時間もかかるけど、他にあてがないから割り切った。
そうしてじっと眺めていたら、掃除夫さんが教えてくれると言ってくれた。じっと見られていると気が散って集中できないそうだ。本当に申し訳なく思った。
こうして掃除に関しては必要な知識が集まった。
掃除ができる魔法薬なら作れると思う。他に何が必要なのか、私には判断ができなかったから、依頼人に直接聞いた。
そこで紙を飛ばした。目的の人まで届く魔法薬を染み込ませた手紙を飛ばしたのだ。
私がお昼から帰えると、もうお店の前で依頼人が待っていた。
ひとまず、掃除の魔法薬だけでいいそうだ。追加で料理と洗濯と買い物の魔法薬も頼まれた。買い物が出来るようになる魔法薬、とはなんぞや。
便利な魔法薬には注意点がある。それぞれ違うけど、家事が出来るようになる魔法薬は、これで覚えた知識は忘れやすく、根付きにくい。頭で覚えるわけじゃないので、言語化もしにくい。結局、身につけるには努力が必要なのだ。
それを伝えたけど、聞いてくれたかは怪しい。もう一度説明する必要があるかもしれない。
掃除が出来るようになる魔法薬は、出来上がり次第、渡すことになった。完成したら今日の手紙と同じ方法で連絡をするように言われた。
魔法薬で手紙を飛ばすやり方は、あまりやりたくないんだけど。魔法薬を使うから、連絡手段の中でも特に費用が高くなる。二度も三度もやりたくないけど、今回は良いとした。
連絡する回数を減らすために、なるべく同じときに複数の魔法薬が完成するように調整したい。
それ以前に、まずは料理と洗濯の知識を集めなくては。それとお買い物の知識も。
お買い物ってなんだろう。あのお客さん、お金を使った取引なら、既に私のお店でやったんだけど。
具体的に何を知りたいのだろうか。私はそれを知りたい。
……ねよう。




