静寂の月 十六日(晴れ)
静寂の月 十六日(晴れ)
改装とは思っていたよりも変わりないものだ。お客さんが増えるかと思っていたけど、改装前と大きく違わない。
仕方がないのかもしれない。外観に変化はないし、私は改装を外的に声を上げていない。改装したと知る手段がなかったのだ。
久しぶりに来てくれたお客さんからお店が綺麗になったと褒められて、そこでようやく気がついた。綺麗になったと言ってくれる人に偏りがあると。
我ながら頭が足りなすぎる。そりゃあ、知る機会がなければ知ってもらえないよ。
そこで、改装とは違うけど新しい話題を作ろうと考えた。衝撃的な魔法薬を作る。悪あがきみたいなものだ。
この魔法薬がうまくいくかはわからない。成功とは、一見さんが多くなることだ。失敗とは、いつも通り変化がない場合。
これから作る魔法薬は精製に必要な工程も多いし、魔法薬でも中の上くらいの値段になる。赤字も覚悟しないといけない。真の失敗は、全く売れないことかもしれない。
全く売れないとは考えていない。
作ろうとしている魔法薬は、あの頃、羽目を外しすぎて作り上げてしまった消臭剤だ。臭いを消すわけじゃない。
効果は、掃除をしてくれる。それだけだ。
魔法薬を使った人にとっての汚れを除去してくれる液体だ。ありとあらゆる汚れに効く。
汚れを取ってくれる魔法薬は他にも沢山あるけど、消臭剤の特徴は部屋中を掃除するとか、範囲を指定できることだ。
作成コスト以外は完璧な薬だと思っている。また、掃除よりも消臭剤を作る時間が長くなるのも欠点かもしれない。
自分で使うと酷いものだけど、お店に置くなら悪くない。お客さんは時間をお金で買えるようになるのだ。
材料を用意しないといけない。また傭兵組合へ依頼をするとしよう。
売れるといいけど。