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静寂の月 十五日(雨)
静寂の月 十五日(雨)
曇った朝から始まって、朝食が終わる頃にはポツポツときはじめた。
一日中、傘が手放せない日の始まりだ。
動物の行進で荒れた道は、いつもよりも水たまりを多く作っている気がした。
お店はいつもどおりに開ける。でも、お客さんはいつも通りとはいかなかった。
なぜかお客さんが多かった。もしかしたら近くで催し物でもあったのかもしれない。
売れるのは決まってお茶だった、お茶の棚だけが空になるほど。
結局、わけがわからないまま一日が終わった。晴れの日ですら珍しい客入りで、くたくたになってしまった。
いつもこれ以上の人数を捌いている、雑貨店その他のお店をやっている人たちは鉄人に違いない。
普通のお店みたいな日だった。魔法薬も売れたけど、店にあるものが捌けただけで注文はない。
たった今、花火が見えた。お店の方向であがった。
小さいけど綺麗だ。日記を畳もうとした直前に音がしたから記せた。
お茶が売れた理由と結びつけるのは難しいけど、催し物は確かにあったみたいだ。
いつの間に雨があがったんだろう。