夕餉の月 十五日(雨)
夕餉の月 十五日(雨)
本日は休みだ。特にこれといった予定もなかった。
午前中は、カトカエア緑葉店を見に行った。
何度か行っているのだけど、今日はどの日よりも時間を使ってじっくりと見てきた。
棚の並び方、商品の種類と数、店員さんの対応、お客さんの顔。
見てわかったのは、怪我や病気を強く意識している。風邪や腹痛、火傷に裂傷、人がよく苦しむ怪我や病気によく効く薬が多かった。それだけで私のお店の五倍は品数があった。
とても勝てません。まず棚の面積が足りない。質なら迫れそうだけど、種類が及ばない以上、展望がない。
やっぱり副産物系で戦うのが堅実だった。
午後は完全に遊びに使った。
たまたま出会ったヒナオさんという方と菓子店の食べ歩きをした。
ヒナオさんは旅をしているそうだ。サンクシエカを知らない点で私と一致した。
また、ヒナオさんはカシュネ出身だそうだ。そこも私と一致した。
だから話が合ったのだと思う。
一度、カシュネに戻ろうとしていた途中で、サンクシエカに寄ったのだとか。
ヒナオさんは魔法が得意ということで、いろいろと見せてくれた。
お菓子を食べながら、お茶で赤い氷の塔を作っていたのが印象的でよく覚えている。
旅の話を聞かせてもらったり、逆に私がお店の話をした。
旅には事件がつきもので、よく怪我もするそうだ。役に立てばと思い、棚に並びきらなかった軟膏をプレゼントした。少し古めのものだけど、喜んでもらえた。
ヒナオさんはお返しのつもりで言ってくれたのかもしれない。旅の途中で魔法薬に使えるような珍しい材料を入手できたら提供すると約束をしてくれた。
魔法薬の精製は楽しいので、待ち遠しい気持ちだ。
材料の提供によって魔法薬を作れたら、真っ先にヒナオさんに贈りたい。きっと喜んでくれるから。




