静寂の月 十二日(曇り)
静寂の月 十二日(曇り)
今日は街中が騒がしい一日だった。人も動物も叫んでいたからだ。
どこかの檻に穴が空いたみたいで、動物たちが集団脱走、逃亡劇を演じていた。
その動物たちが、街中を疾走したのだ。
家畜なのか、芸達者な動物なのか、もっと違う目的で集められた動物たちだと思う。正確な情報はなかった。
街中が大騒ぎだった。笑い声や悲鳴や歓声が混じって、わけがわからない。お祭りが羨むくらい賑やかだった。
お店の前にも動物たちはやってきた。始めは地響きから始まる。地響きが最高まで膨れ上がると、大量の影が現れたのだ。
モコモコ毛玉や斑模様などが山のようにまとまって、波のように押し寄せてきた。瞬く間に道を飲み込んでいったのだ。
非常に危険な光景に見えたけど、最終的に怪我人は驚いて尻餅をついたマッチョ一人だけだった。
動物たちには、人を避ける技術が完璧に備わっていたようだ。
夕方に最後の一匹が捕まった。夜まで続かなくてよかった。
街の被害は、とんでもない汚れと、花壇や街頭の破損くらいだった。
そんなお祭りが開かれて、私のお店は皆の眼中になかった。私も外ばかり見ていたくらいだ。
静かな一日。お店からしたら不幸な一日だったけど、落ち着ける時間はいいものだ。
それと外の掃除に使える魔法薬を作っていた。
動物が走り去って、蹄によって道がところどころ割れてしまってる。その亀裂を修復するための魔法薬だ。
接着剤の上位互換みたいな魔法薬で、近づけたものが元同一のものであれば、完全に元の状態に戻るという、とんでもない魔法薬だ。
もちろん条件はある。直す物の材質や大きさ、壊れてからの時間経過。それらに加えて、直してすぐは壊れやすくなる。
街が修復してくれるならいいけど、してくれないなら私がこの魔法薬で近場くらいは直そうと思う。街全体は無理です。それだけの魔法薬も作れません。
私としては、街の方で、税金で直して欲しいと思う。その方が確実だ。