静寂の月 七日(晴れ)
静寂の月 七日(晴れ)
今日はたまたま早起きをした。毎日のルーチンワークが早い時間で行われた。買い出しにも早い時間に出た。
気まぐれだったと思う。もしかしたら、何かに引き寄せられたのかもしれない。
時間があるからと、買い出しのときにいつもよりも大回りをして、いつもは見ないお店を見つつ買い出しをしたのだ。
そのとき、一軒の露天商と出会う。見ない顔だった。私はサンクシエカでは新参の部類だから、偶然知らなかっただけかもしれない。でも、街の外から来た人だと思う。姿格好が異国風で、少し浮いていた。
一見、普通の露天商だけど、他と違うところがあった。扱っている品だ。珍しい品を置いていたのだ。銀色で金属のように硬い羽根とか、白い石の彫り物とか。
その中に、魔法薬の材料になる物が紛れていた。
橙色の果物で、指先が器用になる薬などの材料になる。
夕日の実という、もっと西の方で採れる実だ。
非常に痛みやすく、多くは運んでいる内にダメになる。保存処理をしても、無視して痛む難敵だ。
エアラ国近辺では中々お目にかかれない。カシュネでもそうそう入手できない品だ。
見たところ傷んではいなかった。でも若干変色していたから、ギリギリってところだ。
それを購入し、買い出しを忘れて、お店に全力疾走した。痛みそうな部分を取り除いて、すぐに魔法薬へと変えた。
確認したところ、間違いなく夕日の実だった。似た紛い物じゃない。毒になる薬剤で保とうとしたり、実を殺すような方法で状態を保たれた痕跡もなし。
鮮度はいまいちだけど、自然に実っていた夕日の実だった。
できた薬はカウンターに置いた。魔法薬の中でも特に高い値にしてある。売れる前に変質して捨てなければいけなくなるかもしれない。
良いことがあった日だけど。億劫だ。今日、買い出しを忘れたおかげで、明日の買い出しが多くなる。こういうときに限って、水とか重い物が尽きそうなんだ。