静寂の月 五日(晴れ)
静寂の月 五日(晴れ)
今日はすっからかんだった棚に、品を戻した日だった。
お店は、改装工事が終了して、かつて無いほど綺麗になっていた。床から天井までピカピカだ。文句のつけようもない。
あまりにも綺麗すぎて歩きにくかった。
綺麗になっても、私のお店なのは変わらない。広さも前と同じだし、朝の陽の入り方も同じだった。
棚の位置にも大きな変化はない。内側に置く予定の、看板分が空いたくらいだ。
棚は若干狭くなったけど、元からそう多く品を出していなかったので大丈夫。
棚に品を戻すために、倉庫を開けた。保存してあった品を取り出して、戻していく。
そのときに懐かしい物を見つけた。羊櫃草を使った香水だ。
最近は全くお店に出していなかった。人気がなかったわけじゃない。副産物系の性と言うべきか、羊櫃草を使った魔法薬を作る機会が少なかったから副産物が集まらないのだ。
羊櫃草の香水を出せないのは仕方がないけど、勿体無い気がする。出せば売れるのに。
何かいい方法が思い浮かばないものか。
棚にはしっかりといい品を並べた。安めの魔法薬も二種類増やしておいた。
一日だけ、一つのことを絶対に忘れない薬と、足元の段差に敏感になれる薬だ。この二種類は魔法薬とは思えないくらい安い。
これで明日はお店を開けられる。改装後の一日目、楽しみだ。