静寂の月 二日(雨)
静寂の月 二日(雨)
雨が降った。屋台は閉店となる。
今日は一日看板のことばかりを考えていた。湿気が強い日は塗装に向かないらしいから、下書きだけをずっと続けていた。
改装業者の方から、看板にできそうな板を譲ってもらった。板は大きめなのを貰った。まだ形すら決めかねているからだ。
四角にするのか、楕円を描くか、少し歪んだ形にしてみたり、動物でも描いてみようか。瓶の形がいいかもしれない。
奇抜な形はあまり好きじゃないから、現状では四角が優勢だ。
雨の中、塗料を買いに行った。魔法薬を使った染色はやめた。材料費が高い。
魔法薬は、仕上げのコーティングに使う程度で収めるつもりだ。
染料店はとても綺麗だった。様々な色がずらりと並んでいるのだ。
私のお店は光りが薬と瓶を輝かせて、妙に明るくなる。染料店は真逆で、どの色も落ち着いていた。
片手で持てるくらいの大きさの小箱が、壁一面に並んでいた。その小箱に染料が入っているのだ。どの色が入っているかわかりやすいように、小箱が着色されていた。
まるで、色の数から開放された、夜の虹みたいだった。
私は必要な色を買って、ついでに冷たいジュースを買って戻った。
必要な色と言っても、完成度を思うと、必要ない色や、必要になる色がまだまだ出てきそうだけど。
冷たいグラスを傾けながら、どの色をどこに置くか考える。雨音に囁かれながら。そんな一日だった。