黄昏の月 二十四日(曇り)
黄昏の月 二十四日(曇り)
私はお店にお茶を置いている。
それなのに、美味しいお茶を作ろうとしたことがないかもしれない。
複数の色が混在したお茶や、珍しい味のお茶を作った覚えはある。お店にその成果が並んでいる。
それなのに、お茶の味そのものを追求した覚えがない。濃さの調整すらしていなかった。
今日、珍しくフィアノさんが遊びに来た。営業時間中にやってきた。私は身動きが取れなかったので、お茶を提供したのだ。
比較的売れ行きがいいけど、改装工事まで棚に残りそうなお茶を選んだ。
魔法薬にしたフキアの種の外側にあった果肉を使う、副産物系のお茶だ。
赤っぽい色で酸っぱい。後味に酸味がある。好きな人は好きだけど、苦手な人にはきついと思う。
フィアノさんはそれを口にして、糖を加えようとした。
私は驚いた。それで美味しくなるかはともかく、調味料を加える発想がなかった。
なんでこの程度も思い浮かばなかったのか、全くわからない。料理をする時はちゃんと味付けをしているのに。
いつも魔法薬ばかりだから、こんな当たり前すら抜けてしまったのかもしれない。
改装のときに一度、棚から全てを撤去する。質を見直すいい機会かもしれない。