黄昏の月 二十二日(晴れ)
黄昏の月 二十二日(晴れ)
魔法薬を水鉄砲に入れてはいけない。学生時代に、そんなことをしていた友人がいた。虹色に光る魔法薬を入れて、壁に絵を描いていた。
絵を描くのは学校からの依頼だった。あの頃みたいに、仕事を無報酬でよろこんでは、もうできない。
道具類はこちらで用意するように言われたけど、水鉄砲を使うようには言われなかった。
魔法薬を込めた水鉄砲で絵を描く。初めはよかった。水鉄砲は一度に多くの液体を吐き出すから、ベチャベタになるばかりだったけど、ちゃんと壁に色がついていた。
でもしばらくしたら、水鉄砲の圧力で魔法薬が変質し始めた。
結果だけ書くと、水鉄砲は火を吹いた。水鉄砲が火鉄砲になったのだ。熱で水鉄砲が壊れて地面を焼いて、ちょっとした騒ぎになった。
私は友人を売った。粛々と報告だけをして、知らぬ存ぜぬ……ではいられなかった。黙って見ていた罪で怒られた。
昔は友達との喧嘩の種になったけど、今では笑ってしまう。そこまで前ではないはずなんだけど、懐かしい。
思い出したのは、新しく看板について案を出していたからだ。看板が目立ってわかりやすくするために、どんな方法を採れるか考えた先に、虹色に光る魔法薬があったからだ。
あれは他にない染料になる。剥がれやすいから上からコーティングする必要はあるし、後々修正しにくいけど、特異性は出せると思う。まだ案の段階だ。
看板はお客さんがはじめに目にするはずだから、考えすぎるくらいで丁度いい。