181/378
黄昏の月 二十日(晴れ)
黄昏の月 二十日(晴れ)
真実しか言えなくなる薬の注文があった。飲むと嘘が言えなくなる薬だ。
お客さんは家庭内で起きた争いを収めるために薬を欲しがっていた。容疑者のみんなに真実を言わせたいそうだ。
争いの原因は、消えたおやつだ。おやつに触れられるのは家族だけ。それなのに誰も食べていないと主張する。そんな矛盾に悩んでいた。
注文された薬を使えば犯人の特定は容易だ。全員に飲んでもらって、順番に訊いていけばいい。
しかし例のごとくこの薬には問題点がある。
それは確信犯や思い込みが激しい人には効きにくい点だ。
また、おやつを無意識のうちに食べてしまったのなら、薬に反応は出ない。犯人は見つからない。
私がとても気になる問題点は、この薬が魔法薬ってところだ。
家族全員分のおやつよりも、魔法薬一本が高くつく。
犯人探しをやめて、仲良くおやつでも食べればいいのに、と思いながら、私は薬を渡して金銭を受け取った。