夕餉の月 十三日(曇り)
夕餉の月 十三日(曇り)
よりよい香りの香水を作ろうとしている自分に呆れる日だった。
私は毎朝、商品の補充をしている。前日に売れた物を見て、どの薬を精製するか決める。
よく売れるものは少し多めに。
件数が少なくても確実に売れていくものは、切らさないように。
値札に埃がかぶりそうなものは端に追いやられていく。まだお店を始めて日数が経っていないから、埃を被っている物はないけれど。
今朝は香水を多めに生産した。昨日が十六本に対して、今日は二十本用意した。明日にはその二十本がお店の棚に並べられる。一日で捌ける数ではないけれど、足りないよりはいいと判断した。
香水を作っていて、違和感はなかった。
薬屋が香水を置いてはいけない決まりはない。材料を思えば、むしろ自然だ。
しかし私が思い描いていたお店とはずれている。
傷薬がまさに、私が思い描いていたものだ。魔法薬も考えた。でも、香水やお茶、お菓子に汚れ落としの油など、薬を作った際に余った材料から作れる副産物系を主軸に添えるつもりは全くなかった。
しかし、その私が望む薬ではやっていけそうにない。
本来であれば、お店を開く前に考えることではなかろうか。自分の誕生日に始めたいという思いが先行して作戦が全くない。浮かれていたと今更ながらに反省したくなる。
でも言い訳をしよう。お店を開いていなくても出費は変わらない。方向性がぶれているお店でも、開いていれば売上がある。薬が劣化する問題もあった。
明日はフィアノさんと会う約束がある。取引について、詳しく詰めるつもりだ。
私のお店の印象が、香水になっているかどうか、確かめるいい機会でもある。そんな印象が定着しているなら、もう香水は引っ込められなくなる。
まだ開店から数日しか経っていないから、固定された印象はないはずだ。