黄昏の月 十七日(曇り)
黄昏の月 十七日(曇り)
久しぶりにいい夢を見られる薬を作った。
悪い夢をよく見るという人から注文があったのだ。まだ成人していないくらいの人だった。
話を聞くと、その人は魔法学校の生徒だった。近々試験があるそうだけど、そこでいい結果を出せる展望がないそうだ。
毎日、試験に向けて努力はしている。でも他の生徒も努力を基本としていて、実力差を広げられるばかりだそうだ。
関係ないけど、私は思った。そういえば魔法の練習、最近やってない。
それよりも、いい夢を見られる薬だ。
お客さんは夕方にきてくれた。そんなにすぐには完成しないので、早くても明日の受け渡しになる。今夜は悪夢を見てもらうしかない。
望まれた効果は、学校で最高にうまくいく夢だった。
本来、いい夢を見られる薬は、特定の夢を見る薬じゃないんだけど。できなくもないけど。
でも良い夢過ぎると夢に逃げ込もうとするかもしれない。程よいくらいに調整しよう。いい夢を見られる薬であって、最高の夢を約束する薬じゃない。
明日の夕方にまたいらっしゃるそうだから、そのときに説明するとしよう。薬が完成していれば言うことなしだ。