黄昏の月 十五日(曇り)
黄昏の月 十五日(曇り)
今日は、水滴の瓶を作った。遠距離で会話ができる、二本で一つの相互薬だ。
傭兵組合さんが、一階と二階の連絡に欲しいそうだ。
遠距離での会話は、魔法を使えば幾つか方法がある。しかしどうしても秘密裏での会話や、ゼロ時間での会話が難しいものだ。
この水滴の瓶は、ほぼ秘密裏に、ゼロ時間での会話が可能という画期的な魔法薬なのだ。
欠点はある。まず距離が狭い。傭兵組合さんは一階と二階という距離だから問題ないけど、水滴の瓶で街と街を繋ごうとしても難しい。サンクシエカの端から端までくらいが限界だ。
もう一つの問題は、伝えられる言葉に限りがあることだ。限界は瓶の大きさになる。
最大の問題点は、相手に伝わったかどうかの判断ができない。これに関しては伝わったら特定の印を書く取り決めがあれば回避できるけど。
水滴の瓶は常に結露して周囲を白く保っている。そこに文字や絵を書くと、もう一方の瓶が連動して同じ絵や文字が現れる。結露は時間でもとに戻る。
常に冷たいから、暑い日には最高の品でもある。精製から百五十日くらいも使えるので、お財布にも優しい。
傭兵組合さんは、いい魔法薬を知っているみたいだ。