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黄昏の月 十三日(曇り)

黄昏の月 十三日(曇り)


魔法薬は高価なおもちゃでもある。例えば、振動のないところで揺れ続ける魔法薬がある。揺れるだけで意味はない。

置いておくだけで子どもに人気が出てしまう品だ。魔法薬店に子どもはそうそう来ないのだけど。


昨日の今日でスリタの里親が見つかった。たまたま店前を通った親子だ。元気で仲のいい親子だった。きっとスリタは幸せになる。


そんなことがあり、珍しく私のお店に子どもが入ったのだ。事実上、薬しか置いていないこのお店に子どもが来るのは珍しい。お菓子も置いてあるけど、子どもが手を出せる値段ではないのだ。


その子の目線は私のおへそくらいだった。しゃがまないと目線が合わないくらいだった。合わせてみると、いつもとは違う景色があった。光りの加減とか、棚の見え方とか。丁度目線の高さの棚に、多色の瓶が置いてあって、虹の中に迷い込んだような気分にもなった。


魔法薬で遊ぶのは贅沢な行為だけど、なんとなく構わない気分だった。

簡単に作れる魔法薬で、子どもが好きそうなものを作った。揺れ続ける魔法薬だ。

正確にはちょっと作るのが大変なんだけど、精霊薬を少しいじれば類似品ができあがる。わずかに手を加えるだけでよかった。類似品でも見て遊ぶくらいなら十分だ。


揺れる魔法薬は、揺れると固まり、静かに置いておくと緩んで自動で揺れ始める。強く揺れ、揺れが収まりを繰り返して、しばらく待つと一定の揺れで落ち着くようになる。

そうなるまでの過程を見て楽しむ、つまらない魔法薬だ。


でもあの子は楽しんでくれたと思う。ずっと見ていた。

手にとって揺れを押さえようとしたり、強く揺らし続けようと思い切り振ったりしていた。


魔法薬に飽きる前に、私の部屋に招待してスリタを見せた。とても気に入ったようで、向こうの用意が済み次第、引き取りに来るそうだ。


引き取り手が見つかってよかった。これで悩みが一つなくなる。それなのに本気で喜べないのはなぜだろう。


夜、スリタに餌の補充をしようとしたら威嚇をされた。懐かれないのは予想通りだったみたいだ。

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