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黄昏の月 十二日(晴れ)
黄昏の月 十二日(晴れ)
今朝、スリタがケージ内を走り回っていた。猛毒の試験に使ったのに、嘘のように元気だ。
まさかここまで回復するとは思ってもいなかった。与えた薬のせいだろうか。ここまで効果があるなんて驚きだ。死んでしまうと思っていたのに、全く見当が外れた。外れてよかった。
与えていた体力回復薬は薄めたつもりだったけど、それでも濃かったのかもしれない。元気すぎてうるさいくらいだった。元気がないよりはいいけど。
この子を手放さなければいけない。
毒の試験に使ったのに、生きている形で手放せるのは幸いだ。なるべく早く里親をさがさないといけない。
要件を記した用紙を、お店の前に張り出しておいた。これで里親が見つかればいいけど、さてどうなるかな。
お店の方は、順調だ。今日もちゃんとお客さんがきた。棚が落ちる事故もないし、難解な魔法薬の注文もない。カウンターで居眠りしてしまいそうなくらい、静かで落ち着いた日だった。