黄昏の月 十日(雨)
黄昏の月 十日(雨)
なかなかに激しく攻撃的な雨の一日だった。夜になるとすっかり晴れて良い星空になったけど、昼間は街中に川ができそうなほどだった。小さな川ならそこらじゅうに出来ていたと思う。
こんな日はお客さんが少なくて、私が魔法薬に気をかける時間が増える。
昨日あった注文の、物を固くする魔法薬から始めた。
物を固くする魔法薬は、非常に危険な薬だ。どんな物でも凶器に変えられる。ある程度、形を保てる物が条件になるけど、その条件を達成できれば、どんなものでも硬化させられるのだ。
本来であればこの魔法薬は、工事の作業員や外へ遠征に出る傭兵のような、身近に危険がある人が使うものだ。軽いものを固くして、軽快な動きを確保しつつ身を護るのだ。
しかし今回の注文は普通に暮らす一般人からだった。何に使うのだろう。
私が探ることじゃない。
危険な魔法薬だから、いつもどおり書類を作って国に提出するだけ、それから先は、警衛部がやってくれる。
でも私が販売した薬を用いて事を起こされては堪らない。そうならなければいいと思う。
一部、材料が不足していて、強い雨の中を買い物に行く悲劇に見舞われた。足りなかった材料が、サンクシエカで補充できる、捻れ木でよかった。