夕餉の月 十二日(雨)
夕餉の月 十二日(雨)
昨日、副産物系がよく売れた理由が判明した。
なんてことはない。薬の材料を用意してくれることになった、モコア・フィアノさんが犯人だった。
一昨日、私は手ぶらで会うのも失礼かと、香水とお茶を用意したのだ。
いつもは薬を作った余りや、素材の薬にはならない部分を使って作るのだけど、
フィアノさんへ差し上げたのは、薬効がある部分も使った、ちょっといいものだった。
どうやらそれが好評だったらしい。
私よりもずっと顔が広いフィアノさんが、話題に使っていたようだ。香水も早速使って下さっているらしく、いい匂いだと好評のようだ。
カトカエア緑葉店がサンクシエカでは有力な薬屋だ。強すぎて、他の薬屋は軒並み枯れている。事実上、カトカエア緑葉店にない薬は、サンクシエカでは入手不可能だった。
そこに私のお店が現れる。
たまたま、この手の香水やお茶はカトカエア緑葉店に取扱がないために、私のお店に人が入ったようだ。
しかし限界はあるはずだ。過去に潰れていった薬屋が、私と同じことを考えなかったとは思えない。
限界まで副産物系でお店を保ってもいいかもしれない。その先を考えられるならだけど。
副産物系をフィアノさんのお店に卸すのはどうだろう。気に入ってくれたなら、置いてくれるかもしれない。ここに並べるよりも、ずっと売れ行きがよくなりそうだ。
本日は昨日より少し静かだった。雨が上がれば客足がよくなるだろうか。
やっぱり、薬はあまり人気がない。傷薬や風邪薬など基本的な薬関連でカトカエア緑葉店に勝とうとするのは難しそうだ。
カトカエア緑葉店では大量生産できない魔法薬は置きづらい。そんな魔法薬を私のお店に置けたら生き残れそうだけど、大量生産できない理由になる希少な材料が、そもそも用意できない。
薬とは言えない、副産物系を主軸に置くしかないのだろうか。