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黄昏の月 二日(晴れ)

黄昏の月 二日(晴れ)


毒薬は問題なく完成した。解毒薬もできあがって一安心だ。


サンクシエカでは、実験用動物を販売するお店がないから、愛玩用のスリタで代用した。

スリタに刃物で傷を付け、毒を試す。出血量が増えていると確信できる量が流れたら、解毒薬を試す。

毒は解毒薬で抑えたから命を失うまで出血はせず、スリタは助かった。でも、もう長くはないはずだ。小さな体なのに、かなりの血を流させてしまった。あれからずっと震えている。怯えているのだろうか。もう私に懐いてくれることはないだろう。

致死性の毒なら、楽をさせてあげられたのかもしれない。とどめを刺すのが優しいのかもしれない。考えたくない。



今日は火炎薬にも手を付けようとしたけれど、別口から注文が入って火炎薬は後日となった。


お昼すぎのいい時間に入った注文は、薄膜剤だった。

美術品や家具など、傷ついてほしくないものに塗ると、均等に薄い膜を形成して外的要因から守ってくれるという優れ物だ。

魔法薬の魔法の部分で、子どもが塗ってもムラなく塗れる。専用の薬剤で簡単に剥がせる割に、刃物や石で、マッチョがガリガリ傷つけても大丈夫だ。オプションで色も付けられる。無色以外の注文は無いに等しいけど。


内側からの衝撃には弱いけど、外側からの衝撃にはとても強い。その性質を利用して、本来であれば高温が苦手な物をスープ皿として使ったりもできる。

私は一時期、氷の食器を作って揃えたことがある。すぐ飽きたけど、始めは楽しかった。


注文してくれたのは、結構お金持ちっぽい人だった。皺も汚れもない装いを見て、そう思った。髪も整っていたし、肌も綺麗だった。

家の床か、コレクションを保護するために使うのだろう。


久しぶりに私も氷の器でも作ってみようかしら。そんな事を考えながら、ちょっと多めに作っている。明日には完成して、お客さんに渡せるはずだ。


この注文のおかげで、少し気分が晴れた。

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