黄昏の月 一日(晴れ)
黄昏の月 一日(晴れ)
月が変わって、昨日の晴れと今日の晴れが違って見える気がする。多分勘違いか、雲のせいだけど。
傭兵組合さんからの注文に毒薬があった。
ここで言う毒は、血液と結合して小規模な魔法を展開するもので、毒性がある物質とはまた違う。魔法薬の形を取った、液体状の爆弾みたいなものだ。
話によると、広い剣で戦うときに、後押しとして使うそうだ。毒が猛獣の体内に入る頃には大きな傷ができているはずだ。なので、血液を溶かして、出血を促す毒にする。
毒薬は自動的に解毒薬と抱き合わせになる。この毒なら、その解毒薬の精製に時間がかからない。魔法薬を無効化するだけで元に戻るはずだ。流れた血液は戻らないけど。
私は毒が苦手だ。魅力を感じられない。害する目的で魔法薬を作るのが、あまり好きじゃないみたいだ。
だから毒を最初にした。でもやっぱり後に回したい気持ちもある。
明日は試験のために小さな動物を買ってくる。健康に生きていて、安い動物を選ぶつもりだ。
毒を試すために動物を買うのは非常に気分が悪い。だからって、自分で試すわけにもいかない。
動物に毒を流して、どの濃度でどんな効果かを見る。それを元に、濃度を調整する。唯一、魔法薬を作っていて、嫌になる瞬間だ。
私が作っている魔法薬の毒は、解毒が難しい複雑な毒とは違う。単純な作用で十分だから、一日もあれば基本構成はできあがった。試験に問題なければ、毒は今日作った比率で本数を揃えるだけだ。
明日は試験の後、大鍋で一度に大量の毒薬を作って次に移ろうと思う。鍋で作った毒も試して、問題がなければ瓶に詰める。解毒薬も一緒に試験できるから、予定通りに進めば毒と解毒薬は明日には揃っているはずだ。