帰巣の月 二十三日(晴れ)
帰巣の月 二十三日(晴れ)
晴れた。久しぶりの明るい空は、人を外へと誘った。私はお店にずっと引きこもっていたけど。
外はどこも泥でデロデロになっていた。泥が石畳からはみ出していて、掃除が強制された。
普通の掃除ではうまくいかない。箒で掃いたら泥が染料のように伸びるだけになる。
そこで、余っていた水を固める魔法薬を使った。
魔法薬を薄めて、偏りが出ないように撒く。摘んで引っ張れるまで泥が固まったら、一つにまとめて移動させた。
店先の掃除はいつもよりも時間がかかった。でも許容範囲だ。
その後、四軒隣の人が水を撒いて、泥を押し出すようにして、あっという間に綺麗にしているのを見て、私もそうすればよかったと思ったけど。
今日の客入りはよかった。副産物系が一気に消えた。棚の八割くらいが売れていった。特に売れたのはお茶系だ。文字通り、なくなった。
倉庫にまだあるから良いけど、ずっとこれくらい売れ続けたら、すぐに底が見える。ずっとこのペースで売れ続けるなんて有り得ないけど、近い内に売れたものをまとめて補充してもいいかもしれない。
魔法薬はいつも通りだった。売れない。どれも高価だから仕方がないけど。
注文もなかったので魔法薬は文字通り、動かなかった。