帰巣の月 二十日(雨)
帰巣の月 二十日(雨)
フィアノさんのお店で購入した音響装置がなくても、軽快な雨音が響く日だった。
そのせいかお客さんの足も遠のいた。
暇な日はチャンスでもある。魔法薬の開発ができる。お客さんが来た瞬間に手が止まるから、休みの日にやるのが本当なんだけど。集中している時に扉が開くと、ため息が漏れてしまうのは私の悪いところだ。
今日は幸い、もしくは不幸にも、集中を切られなかった。精霊薬の開発は進んでいく。進展はまるで無いんだけど。
基本的な考え方として、精霊薬の完成形は、一つの魔法薬だけで複数の魔法から選択して効果を得られる。例えば、一つの魔法薬に複数の効果が内包されていて、且つ選ばなかった魔法は発動しない状態だ。
まあ難しい。一つの魔法薬が複数の魔法を持つのは、魔法薬の基本に反している。そんなことができるなら、魔法薬の材料に悩まされない。
相互薬にも限界はある。二つの魔法薬を繋ぐなら難なくできても、三つ四つと増やすと経費がバカにならないし、そもそも意味がない。
魔法薬は使ったら内包されていた魔法が発動するものでしかない。当たり前だし、忘れたことがない基本中の基本だけど……改めて思い知らされた。でも、覆したいな。