夕餉の月 十日(晴れ)
夕餉の月 十日(晴れ)
今日はお店を休みにした。人と合う約束がある。
モコア・フィアノという、私と歳が近いと思われる子だった。
昨日、お店までいらっしゃった、お客さんじゃない人だ。
彼女は商店を営んでいるようで、仕入先に困っていないかと売り込みに来たのだ。
まさに仕入先は考えていた。
そのときにより、あっちこっち変えていては安定性に欠けるし、信用という意味でもあまり好ましくはない。
得意先を見つけて、そこに無茶をきいてもらいたいと考えていた。
そんなときに現れたモコア。彼女も取引先を探してたらしい。新しい薬屋の噂を聞いたとか。
私のお店が不安定なうちに、柱になりたがっていた。
今日はその話をしてきた。
話し合いの結果、口上での契約を交わした。まだお互いに距離がある取引になる。
取り決めはしなかった。私が欲しい材料を提示して、モコアがそれを用意する。私のお店まで届けてもらうか、私が受け取りに行って、そこで金銭が行き交う。保証は一定の以上の品質を提供してくれるだけ。割引もまとめ買いもない。普通のお買い物だ。
どこまで希少な材料を揃えられるのかは、まだこれから詰めていく。
商店を営んでいて、調合薬店に売り込みに来るくらいだから、ある程度は薬草関連にも明るいはずだ。薬を作るに当たって必須級の植物の知識はあるようだった。
ただ、草以外はあまり詳しくないかもしれない。蟻の蜜の話にはついてこれなかった。
でも基本的な材料が入るなら、安心できる。材料が切れる心配はしばらくの間は必要ない。
試しに購入してみたところ、満足できる鮮度と品質が保たれているのがわかった。
しばらくは利用してもいいのではなかろうか。




