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帰巣の月 十二日(晴れ)
帰巣の月 十二日(晴れ)
あまり作らない魔法薬の精製には時間がかかる。今日は体温を少しだけ上げる魔法薬の注文があった。
別にそれ、魔法薬じゃなくても良いんじゃないかな。わがままだけど魔法薬らしい魔法薬を作りたい。
注文は注文だ。お客さんも本気で欲しがっているのだ。ちょっとしたおまけに、美味しい味にしておいた。そのために雑談で、柑橘系が好きだと聞き出しておいたのだ。
体温を上げる魔法薬はとても簡単だ。もはや魔法薬にする意味もないくらい。キリの葉とお湯だけでも近いものができるはずだ。ここまで切り詰めたら作るのが難しくなるけど。
今回の魔法薬には、体温を上げる効果に、柑橘系の味、魔法薬自体に保温の効果も付けた。しばらくは暖かいままのはずだ。飲みやすい温度に保っている。
受け渡したときはとても好評だった。私も心から笑顔になれるくらい。今日みたいな日がまたあればいいな。