豊穣の月 二十六日(雨)
豊穣の月 二十六日(雨)
月の終わり。三日目の雨。昨日よりは雨音は静かだった。
今日はあの依頼の期限だ。服を作り出す薬の依頼だ。もっと早いうちに短い名前をつければよかったかもしれない。今更だけど。
その人、依頼人は朝一に来た。お店が開く前にやってきた。
用意はもう終わっていたし、特に何もなかった。魔法薬を渡して終わり。普通のお客さんと同じだった。
しばらく続いていた依頼が終わって、肩の荷が下りた。これで他のことにも集中できる。
と、思ったら新しい依頼が舞い込んできた。
傭兵組合から火炎薬の依頼が入った。近々遠征するそうで、そこで使うらしい。
火炎薬といえば、比較的一般的な魔法薬だ。発火する魔法を込める。
傭兵の人が使うとしたら、火を着けたい場所に瓶ごと投げて当てたり、武器に固着させて武器に火を着けたりするのかな。
簡単な注文だ。材料も傭兵組合から渡された。時間があればできる。この手の魔法薬を作るのは久しぶりだ。最近は人が飲む用の魔法薬ばかりを作っていた。
この魔法薬はどこでも火を着けられるから便利だけど、火力の調整が難しい難点がある。
誤飲をしてしまうと、悲惨なことになる。
傭兵組合の人が誤飲をするとは考えにくいけど、気をつけてほしいと思う。
明日までに、数を揃えられるはずだ。揃ったら、私が自分で傭兵組合まで持っていくとしよう。