130/378
豊穣の月 二十二日(晴れ)
豊穣の月 二十二日(晴れ)
サンクシエカに帰ろうと思う。荷物は必要以上に鞄から出していなかったので、準備は簡単だった。新しく買ったものを詰めるだけ。
昨日買った帽子をかぶりながら街を出た。
カシュネまではヒナオさんたちと来たけど、帰りは一人だった。魔法力車に乗って、行きと比べたらゆったりとした行程だ。
乗った魔法力車は、ゴーレムが牽引するタイプのものだ。ゴーレム自体がそこそこの値がするから、乗客の人数を確保できないと発車すらしない。今日は運良くそれに乗れた。
今日は本当の意味で休みだったのかもしれない。ただ荷台で揺られるだけだった。景色を見る以外に何もしていない気がする。それ以外は、他の乗客との他愛ない会話くらい。カシュネを離れる理由とか、仕事についてが多く話題になった。
お店に帰ったら、魔法薬について考えなければいけなくなる。それまではこれくらい緩くてもいいと思う。
サンクシエカへの到着は明日の朝になる。午後からお店を開くくらいならできるはずだ。
鞄にはかつて無いほど高価な材料が詰まっている。これで何を作ろうか。まだ考えていない。