豊穣の月 十八日(曇り)
豊穣の月 十八日(曇り)
雨は上がったけど、淀んだ天気だった。
今日はヘミルコエアラ士官学校の模擬演祭を見に行った。
今朝、そのことをヒナオさんに告げると案内をしてくれた。ヒナオさんはヘミルコエアラ士官学校の出身だからよく知っていた。
模擬演祭とはどんなものかを聞きながら向かった。ちなみにヒナオさんは、全く出場しなかったそうだ。成績が上から一割の生徒は出場しないらしい。実力を隠すためにそうしているとか。
ヒナオさんの同行者になれば、券なんて不要だったかもしれない。ヒナオさんは顔パスで入っていた。私にも券の要求はなかった。自分から見せようとしなければ、入場券は必要なかったと思う。
連れられた場所は特等席だった。一体、ヒナオさんは何者なのだろう。主席で卒業したというだけでは厚遇が過ぎる。
ハユレ家という、魔法の名門の本家に籍があるみたいだけど。だから厚遇されているのだろうか。
特等席は、会場全体が見渡せる、視界が良好な席だった。
ぐるっと一周見てみると、会場は客席が円を作っているのがわかる。その中央で模擬演習が行われた。
模擬演祭は出場者同士で魔法の優劣を競う。国内どころか国外からも学生が集まって、実力を証明する戦いだ。
出てくるのは全員が学生。同時に魔法に自信を持つ者だ。みんなすごく魔法が上手だった。
なにより、魔法の発動が早い。私なんて簡単な式を組んで発動するまでも時間がかかるのに、目の前で行われたのは、高度でありながら瞬時の発動だった。しかも状況に応じて使う魔法を切り替えるなんて器用なことまで同時にやっていた。
応援する学校があるのが普通みたいだけど、私にはそんな余裕はなかった。例外なく、みんなすごかったから。
それと、ヒナオさんがヘミルコエアラ士官学校以外の全ての学校を応援していたのが気になって、特定の学校を応援できなかった。
模擬演祭はまだまだ続くそうだ。サンクシエカの二重祭よりずっと長い、一月という時間をかけるとか。明日も、また見ようと思う。ヒナオさんにはもう話をしてある。
本当は、ヒナオさんから提案された。ヘミルコエアラ士官学校が勝っていたのが、むすっとしていた原因かもしれない。
明日はせっかくだから、おやつを作って行こうと思う。