豊穣の月 十六日(曇り)
豊穣の月 十六日(曇り)
カシュネへ向けて出発した。私とヒナオさんとクユールさんの三人で向かう。
クユールさんはヒナオさんの同行者だ。ヒナオさんがサンクシエカにいる間は、クユールさんもサンクシエカにいるはずなのに、なかなか接点がなかった。イラテアの青い蕾を採取したとき以来だ。
クユールさんは口数が少ない。無駄話は全くしない。カシュネへ向かう道中でも、交流はまるでなかった。
会話はほとんどヒナオさんとだった。
ヒナオさんは色々な話を聞かせてくれた。旅で行った場所の話や、クユールさんへの愚痴とか。目の前で愚痴を言うものだからヒヤヒヤさせられた。クユールさんはまるで気にしていないようだった。
楽しかったカシュネへの道中は、順調すぎた。
まず足が早い。街道では、襲われる可能性がある。だから警戒しながら移動するのが常だ。
しかし、二人は全く警戒をしていなかった。警戒をしないものだから、どんどん前へ進める。魔法で危険が寄り付かないようにしていたそうだ。私にはどんな魔法なのかわからない。
そもそもカシュネは近い。二日くらいで着く距離だ。今回は速く進んだものだから、一日もかからなかった。こんなに近かったのかと、驚かされてしまった。
夕方頃にカシュネに着いた。そこから宿探しはしていない。ヒナオさんの家に泊めてもらえることになった。とても広いお屋敷だった。どうやらヒナオさんはいいところのお嬢様みたいだ。私の部屋よりも広い客室を借りている。
天使の毛髪は用意できなかった。お店で探すには、着いた時間が遅かった。明日から、天使の毛髪を探す。すぐに見つかると思う。