豊穣の月 十四日(晴れ)
豊穣の月 十四日(晴れ)
お祭り、二重祭の最終日。天気に恵まれた。
最終日だからと、特に何かを開催するわけでもなかった。
街の中心付近ではクイズ大会や魔法による演舞や他にもいろいろとやっているみたいだけど、二重祭ならではの行事はなかった。
最終日、私は出店の番だ。それまでフィアノさんに任せっぱなしだった。今日こそ私が見ていないといけなかった。
フィアノさんが、お祭りを楽しんできたらいいと言った。その意味は、出店の番を任せてもいいということだ。
最終的には、私は出店を離れた。呼び込みくらいはしたけど、それから先は自由行動になった。
なんかもう、フィアノさんには頭が上がらない感じだ。何もかも助けてくれている。
私がお祭りの最後の楽しみとして選んだのは、スタンプラリーだった。全部で七箇所あるけど、最終日だけで回り切るのは無理だった。
行けたのは四箇所だけ。
虹の橋と、鋼鉄丘、エエラ市場に時計塔。それぞれが程よく離れているから一日中歩きっぱなしだった。ずっと街を見て回れたのはよかった。
虹の橋は、クレーター状に凹んだ場所に渡る巨大な橋だ。
サンクシエカで最も広くて、長い道でもある。クレーターには植物が好き勝手に生えている。林になっているところがあれば、花畑になっている場所もある。
それを見下ろすのも楽しみ方の一つ。
鋼鉄丘は、別に鋼鉄でできているわけじゃない。灰色の外壁が並んだ元住宅街。
もう誰も住んでいない廃墟の地区だ。でもしっかりと管理されている。
国内で一番、過去の様式が綺麗に残っているから人がよく集まっているのだ。
エエラ市場はサンクシエカの東側にある小さな市場だ。
サンクシエカに初めてできた市場で、白い道とも呼ばれている。白い石で舗装されていたからそう呼ばれていたそうだ。もう、その呼び名は残っていない。汚れで色が付いちゃってるし。
もう市場としての機能はほとんど残っていないけど、ここはまだ使われている。
時計塔は最近できた新名所だ。私が引っ越してくる二年前にはできていたけど。
実際は巨大な公園にある目印の一つだった。でも、あまりにも時計塔が目立ちすぎていて時計塔と呼ばれるようになった。
そんなところを回って、一日が終わった。とてもゆっくり過ごした気がする。お祭り最後の日を楽しむ人たちを見ているのもよかった。
何も考えずに過ごした気がする。まるで一日中、うたた寝していたような……それはいいすぎか。