豊穣の月 七日(晴れ)
豊穣の月 七日(晴れ)
今日は懐かしい人に会えた。懐かしいと言っても、たった四ヶ月くらい前のことだけど。
四ヶ月前に友達になったヒナオさんがやってきた。今回も旅仲間のクユールさんと一緒だとか。
ヒナオさんは魔法が得意で、四ヶ月前にはイラテアの青い蕾の採取に協力してくれた。ゴーレムに乗せられて、すごい速さで沼地まで走ったのはよく覚えている。
ヒナオさんたちは、サンクシエカのお祭りを見に来たそうだ。お祭りまで残り三日。来るのが遅すぎたかもしれないと不安がっていた。
不安の種は、宿がとれるかどうかだ。思えば街には人が増えている。サンクシエカのお祭りは、対外的に大きい意味を持っているのかもしれない。
ヒナオさんは魔法がうまいけど、宿の空きは、魔法ではどうしようもないみたいだ。
クユールさんが宿探しに走っていたらしい。ヒナオさんも宿を探していたけど見つからず、私のお店の近くに来たから寄ったそうだ。
宿が見つからなかったら野宿だった。ヒナオさんはそう言っていた。
ヒナオさんたちは旅をしている。よく野宿をして慣れている。でも、街に来たのに野宿はしたくなかったそうだ。ふかふかのベッドを寄越せと叫んでいた。
お祭りの三日前だと、もう宿が危ない。結局、ヒナオさんたちは宿を見つけられなかった。
ヒナオさんがよりぐったりしてお店に来て驚いた。部屋がありそうな宿を知らないかと尋ねられたけど、私にはそんな知り合いはいない。
ヒナオさんとは付き合いが浅い。信用しきって家に呼ぶのは、今思えばちょっと危険だったかもしれない。でも言わずにはいられなかった。
私はヒナオさんに我が家に泊まらないかと持ちかけていた。
野宿を嫌がるあまり泣き出しそうな顔を見て、放って置けなかったんだと思う。私が話を持ちかけた、あのときのヒナオさんの輝いた顔はしばらくは忘れられない。
クユールさんは別の知り合いの元に泊めてもらうことになったそうだ。
そういうわけで、今日はサンクシエカに来て初めて友だちを家に誘った。これを書いている横で、ヒナオさんがちょっとうるさい。
ただ、少しだけ誘うのが早かったかもしれないと思っている。私の部屋には物が散らばって、片付けが終わっていなかった。急いで片付けを進めたけど、荒がある掃除しかできなかった。汚れが目立つ部屋で恥ずかしい思いをしている。
しばらくの間、ヒナオさんを泊めることになったのだから、明日は掃除をする。その上、お店も開いてお祭り用の魔法薬も作る。
やることが一杯で大変だ。